なぜ、私が毎日新聞の記事を危惧するのか。

なんか前のエントリーのコメントでやけにエクアドルに詳しい人が涌いたんで、なぜ、毎日の記事を「生命の危機」と受け取るのか、少し書いてみたいと思います。

まず前提として、エクアドルの治安を知って戴く為に、新聞記事を紹介します。
http://www.extra.ec/noticias.asp?codigo=2008070416038
これは、現在、エクアドルで最大の発行部数を誇る新聞の本日の記事です。
倒れているのは、アイスクリーム売りの男性ですでに死亡しています。この男性は記事によれば二人組の強盗に撃たれました。理由は抵抗したため。アイスクリーム売りは、一生懸命売っても、一日$10稼ぐのは大変です。そんな小銭を盗るために人を殺しています。

私たちが住んでいるのはこういう国です。これでも今日は平穏な日です。死体の数がたった2体だけですからね。
お断りしておきますが、これはエクアドルを貶める為に紹介しているのではありません。現実をみなさんにお知らせするために紹介しています。エクアドルには素晴らしい自然があり、親切な人々が住んでいますが、それでも裏側にはこういう現実が存在します。

ここで重要なのは、この強盗殺人が銃によって行われた事です。この国では銃器は非常に簡単に入手できます。私はこの国の身分証明を持っていますから、明日、銃砲店で9mm口径の拳銃を買い、それを自宅に置く事が可能です。(持ち歩くには別途許可が必要)実際に私の家には、拳銃と散弾銃が常備してあります。もちろん、正式な許可を受けてですが。

このような国で、国名を特定し、国籍を明示して、「狩りとして子供を銃で撃つ」という行為している、という記事を、その真偽に関わらず、「新聞」と言う権威付けが行われた状態で一般に発信した場合、どうなると思いますか?おそらく、大半の人は、自分の経験に照らして、そんな事がこの国で行われているはずが無い、とすぐに気付くでしょう。しかし、ごく一部かも知れませんが、この記事を鵜呑みに信じてしまう人たちがいます。
この、ごく少数かも知れない人たちでも、銃器は所持できます。もちろん実弾が入った状態で。

多分、それが強盗だったなら、助かるかも知れません。強盗の目的はカネです。カネさえ盗れば、それで満足して撃たないかも知れません。でもそれが、意図して「日本人を撃つ」ためだったらどうでしょう。必ず撃たれます。この記事の問題は、「意図して日本人を撃つ」動機を与える事にあるのです。そして、その日本人とは、この記事に書かれた「ツアーで子供を撃った」日本人ではありませんし、記事を書いた豪州人でもなく、毎日新聞の記者でもありません。

2003年にこの記事が掲載されて以来、幸いな事に明らかにこの記事が動機となって殺された日本人はこの国では知られていません。それは幸運な事に、この記事をスペイン語に翻訳したものが無かったというのも理由でしょう。私が検索した限りでは、簡単に検索にかかるサイトでこの記事をスペイン語で書いたものはありませんでした。しかし、それは僥倖です。いつまでも僥倖に頼る訳には行きません。明日、この記事のスペイン語訳が新聞やwebサイトに現れたらどうなるのでしょうか?そして英語だからと安心するわけにも行かないのです。この国ではまともな学校へ通える子供達は6歳から英語を習うのですから。

ところで、私が大使館の安全保障担当領事とお会いした時、双方で一致したのは、「おそらく、何も起きないだろう」という点でした。しかし、同時にこれも一致した見解は「もし、起きたなら、重大事件以外ありえない。」でした。ここでの重大事件とは、日本人が殺害される、という以下の意味はありません。これがどう言う意味を持つのかお判りでしょうか?「何も起きない」という予測は、「危険が無い」ではありません。危険はあっても、様々な要素から「何も起きない」と予測しただけであって、その予測により危険が取り除かれたわけでは無いのです。つまり、私たちは、この毎日新聞の記事により、それでなくても、上記のような治安状況の国で、さらにもう一つの危険、それも発生したなら、ほぼ100%命に関わる危険を背負い込む事になったのです。

これが私たちの置かれた今の状況です。それでも私たちは、毎日新聞と敢えて喧嘩したいわけでは無いのです。少なくとも先のエントリーで行った「問い合わせ」に真摯に答えて戴くだけで良かった。それなら話し合いの余地はあったのです。先の問い合わせに非難や糾弾をしている部分はありません。
でも無視したわけです。私たちにとっては、無用な危険を背負わされた上で、無視までされている。毎日新聞さん、何か申し開きありますか?

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